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2017.05.09

第14回 用法遵守義務違反について

皆さん、こんにちは。今日は、入居者さんが部屋の使用方法を守る義務に違反したときのお話しです。

 

東京地方裁判所八王子支部の平成5年7月9日の判例によると、区分所有建物の専有部を借りている入居者さんが住居専用部分を事務所として使用していることが区分所有者の共同生活の維持を困難にするとして、賃貸借契約の解除及び入居者さんに対する明渡請求が認められた事例です。

 

その入居者さんは、区分所有者である大家さんと賃貸借契約を締結し、住居と店舗の複合建物である区分所有建物の住戸部分の1室を事務所として借りている会社です。

 

管理規約には、住戸部分は住戸として使用するものとして他の用途で使用することを禁じており、さらに入居者さんは、使用規則で電気・ガス・給排水設備の新設・増設・変更をするときは管理組合へ届出をしなければならないのにもかかわらず、無断で電話回線を増設するなどの行為をしたそうです。管理組合が、大家さんと入居者さんに対し、区分所有法の規定に従って、賃貸借契約の解除と部屋の明渡しを求めたとのことです。

 

裁判所は、住居部分と店舗部分からなる複合住宅においては、管理規約および使用細則の定める専用部分の区画に従って利用することは、居住者の良好な環境を維持するうえで基本的で重要な事柄であり、区分所有者である居住者の共同生活上の利益を維持・管理するために不可欠な要件であると認められると判断しています。

 

また、この建物は、1階を店舗専用部分、他の階を住居専用部分と明確に区分している複合用途の建物ですが、明確な区画の維持によって良好な居住環境が予定されており、その2階部分を事務所使用することにより、周囲の住居環境が変化することが否定できないうえ、管理規約違反を放置することにより、住居専用部分と店舗専用部分の区画が曖昧になり、やがて居住環境に著しい変化をもたらす可能性が高く、管理規約の通用性・実効性・管理規約に対する信頼を損ない、広く他の規約違反を誘発させる可能性さえあります。

 

ですから、区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってその障害を除去して区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であることから、賃貸借契約の解除がが認められ、かつ入居者さんの退去明渡が命じられました。

 

区分所有の建物の場合、管理規約や使用細則を確認したうえで賃貸借することが必要ですね。今日はここまでにしたいと思います。

2017.04.30

第13回 近隣への迷惑行為について

皆さん、こんにちは。今日は、近隣への迷惑行為について書いてみようと思います。

 

東京地方裁判所平成10年5月12日の判例によると、隣人への迷惑行為を繰り返し、隣室が空室状態になったことは、賃貸借契約上の信頼関係破壊と評価することができ、そのことを理由とする解除は有効であるとしました。

 

借主は、貸主から共同住宅の1室を賃貸し、同居人1人と生活していました。しかし、入居当初から両隣の住人にたいして執拗にうるさいなどと抗議を重ね、隣室との間の壁を叩くなどの迷惑行為をしたため、両隣の借主は転居することになってしまいました。また、新しく転居してきた隣人までもが、借主らの抗議や壁をたたく行為を理由に転居してしまい、両隣りとも空室状態になっていました。

 

裁判所の判断は以下の通りです。借主らは、隣室から発生する騒音は社会生活上の受忍限度を超えるものではなかったのであるから共同住宅における日常生活上、通常発生する騒音として需要するべきであったにもかかわらず、これら隣室住人などに対し、何回も、執拗に、音がうるさいなどと文句を言い、壁を叩いたり大声で怒鳴ったりするなどの嫌がらせ行為を続けました。

 

結局このことが原因で、隣室住人は退去を余儀なくさせるのに至ったものであるとして、借主らのこれらの行為は、賃貸借契約上の禁止事項とされている近隣の迷惑となる行為に該当し、また、解除事由とされている共同生活上の秩序を乱す行為に該当するものと認めることになりました。

 

そして、借主らのこれらの行為によって両隣の部屋が長期間に空室状態になり、貸主らが多額の損害を蒙っていることは、信頼関係を破壊する行為にあたるというべきであるとして、賃貸借契約の解除を認めました。

 

迷惑行為は百害あって一利なしですね。既に入居されている方のためにも、厳しく対処する必要がありますので、そのようなことがあれば、そのままにしないで、厳しく対応していきましょう。

2017.03.17

第12回 ゴミ出しの違反について

皆さん、こんにちは。今日は入居者さんが禁止されている行為をした場合について書こうと思います。まずは、ゴミの放置についてです。

 

東京地方裁判所平成10年6月26日の判例では、ゴミ等の放置は信頼関係破壊に当たるとして賃貸借契約の解除を認めています。その事例の入居者さんは、大家さんが所有する建物の1室を賃借していました。ところが、大家さんが火災報知器の点検の際に部屋の中に立ち入ったところ、相当な量のゴミが積みあがっていたことを確認しました。

 

いわゆるゴミ部屋ですね。このことから、入居者さんと大家さんは、部屋の内においてあるゴミの撤去をするなど他人に迷惑をかけないことを契約更新の際の条件として、ある取り決めをしました。それは、入居者さんがその項目を遵守しない場合には、当然に契約は解除されるものとして、1週間以内に入居者さんの負担で立ち退く旨の合意がなされました。

 

しかし、それ以降も、入居者さんはゴミの処置を改善せず、大家さんと入居者さんの家族の再三の注意にもかかわらず、2年以上にわたり、部屋の中の極めて多量のゴミを相当な高さにまで積み上げたままにしていることから、大家さんが賃貸借契約を解除し、入居者さんに明渡を求めました。

 

これに対し、裁判所は、入居者さんが部屋の中において危険、不潔、その他近隣の迷惑となるべき行為をしたと言うことが出来、賃貸借契約に違反したと認められると判断しました。

 

信頼関係を基礎とする継続的な賃貸借契約の性質上、貸室内におけるゴミの放置状態が多少不潔であるからといって、直ちに賃貸借契約を解除することはできませんが、「本件では貸主からの再三の注意を受けていたにもかかわらず、事態を改善することなく2年以上の長期にわたって、社会常識の範囲をはるかに超える著しく多量のゴミを放置するといった非常識な行為は、衛生面で問題があるだけでなく、火災が生じるなどの危険性もあることから、貸主やその家族及び近隣の住民に与える迷惑は多大なものであるといえるのであって、このことは、賃貸借契約の解除事由を優に構成すると言わざるを得ない。」として、賃貸借契約の解除は有効であると判断しました。

 

以上、お部屋は綺麗に使いましょう!というお話でした。

2017.02.21

第11回 入居者さんの民法上の義務

以前、大家さんの権利義務関係について記載しましたが、今回は入居者さんの義務について書いてみようと思います。入居者さんの義務については、以下のようなものがあります。

 

1.借主による使用収益

民法第616条によると、借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その者の使用及び収益をしなければならないとされています。

 

借主は、賃借物を使用したり、収益をしたりすることができますが、その使用収益については、居住用等契約で定められた使い方でなければなりません、賃借物の性質上決まっている使い方でなければなりません。これに違反する使い方は、用法違反となります。

 

2.借主の善管注意義務

民法第400条によると、債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもってその者を保存しなければならないとされています。もし、借主がこの注意義務を怠って、故意または過失で賃借している建物に汚損・破損等の損害を与えた場合には、損害賠償の責任が発生することになります。

 

そして、借主がこの損害を任意に弁償しない場合には、その費用は敷金から差し引かれ、あるいは損害額が敷金を上回る場合には上回る部分を請求されても仕方がないということになります。

 

しかし、借主がこの注意義務を尽くしているのであれば、経年劣化や自然損耗による汚損・破損等があるとしても、そのままの状態で引き渡せばよく、賠償責任は生じないことになります。

 

3.借主の通知義務

民法第615条によると、賃借物が修繕を要し、又は賃借物について権利を主張するものがあるときは、借主は、遅滞なくこれを賃貸人に通知しなければならない。ただし、賃貸人が既にこれおを知っているときには、この限りではないとされています。

 

借主が賃借物に関して、貸主に修繕義務がある雨漏り等の修繕箇所などを発見したり、権利を主張するものがある場合には、貸主に賃貸物に関して権利の保全の機械を与えるという趣旨から、借主は遅滞なくそのことを貸主に通知する義務があることを定めています。

 

4.借主の原状回復義務

民法の第483条によると、債権の目的が特定物の引渡しであるときは、弁済をするものは、その引渡しをすべき時の現状でその者を引き渡さなければならないとされています。

 

借主の原状回復義務については、一般的に、賃借物が、自然にまたは使用収益の正常の過程において損耗・摩耗・増減したような場合には、返還(明渡し)時の状態で返還すればそれで足りる、賃借物を契約(入居)時の状態に戻すことが求められているのではないとされています。

 

以上4つが主な賃借人の義務となります。是非参考にしてください。

2017.01.07

第10回 失火責任法について

どうも、こんにちは。やっと10回目の記事になります。今後ともご贔屓によろしくお願いいたします。さて、今回は『失火責任法』についてです。聞いたこと、ありますか?『失火責任法』は民法の特別法という位置づけになります。ちょっと難しい内容ですが、賃貸経営を考えるときには大事なことなんです。

 

一般法とはその分野に対して一般的に適用される法です。特別法がない限りその法律は適用されます。一般法と特別法とで法が違った内容を定めている場合、特別法の適用を受ける事柄は一般法の内容より優先されます。これを『特別法は一般法に優先する』と言います。

 

『失火責任法』では、過失による火災によって他人の家に延焼損害を与えた場合、民法の不法行為責任に関する規定は適用されず、重大な過失がある場合に限り、失火者に責任を負わせると定めています。軽過失の場合の責任が免除されるという一般の不法行為の過失責任主義の規制が緩和されています。

 

つまり、隣家からの延焼による損害を受けても、失火者に重大な過失がなければ、失火者が損害賠償責任を負わないため、被災者は損害賠償を期待できないことになります。このような近所からのもらい火については、自ら火災保険に入って備える必要があるのです。

 

なお、失火責任法は、民法の不法行為責任の特別法であるため、債務不履行責任には適用されません。例えば、うっかり火災を発生させてしまい、それにより部屋を焼失させてしまったとします。そうして、家主さんに借りた部屋を返すことができなければ、失火者は家主さんに対して賠償責任を負うことになります。この賠償責任に備える保険が、マンションなどの火災保険に付帯されている個人賠償責任保険なのです。

 

以上、大家さんにとって入居者さんが火災保険に入っているということ、そして、自らも建物の保険に貼っておくことが大事です。更新などで契約切れになっていたりしませんか?中にはそのあたりが結構雑な管理会社さんもありますから気を付けてくださいね。

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