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  • Tatehisa Ikeda 池田建学
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2016.12.19

第9回 大家さんの権利義務関係について

今日は、大家さんの権利義務関係について書いてみようと思います。民法は、大家さんは入居者さんにその建物を使用・収益させて、対価として入居者さんが賃料を支払うことで成立するとしています。

 

(民法601条)このことより、大家さんには入居者さんがその建物の使用・収益に支障をきたす不具合等が発生した場合には、必要な修繕をする義務があることが定められています。使用貸借という、家賃が発生しないような契約の場合には、入居者さんに通常の必要費を負担させていますが、賃貸借には適用されません。

 

入居者さんは、本来大家さんが負担しなければならない必要費(建物の維持保全のための費用)を支出したときには、大家さんに対して直ちに返してくれということができます。

 

また、入居者さんが有益費(建物の価値を増大させる費用)を支出したときには、価格の増価がある場合に限って、賃貸借契約が終わったときに、その支出額または増価額を返してくれということが出来ます。この辺りは、賃貸借契約で別途特約を定めて償還請求をできなくするということも可能です。

 

建物をお金をもらって貸した場合、大家さんは入居者さんの部屋を使うという目的に沿うようにしなければいけません。大家さんは入居者さんに生活の場を提供するのですから、それができない状態になるのであれば、大家さんの負担で修繕をしなければなりません。もちろん、事業用の賃貸借の場合は、原則自由に取り決めをすることが可能ですので、賃貸借契約書によるものと考えてよいと思います。

 

修繕を入居者さんの負担とすることも、原則としては有効です。しかしながら、判例は、「修繕は借主が行う」または「修繕は借主負担とする」という旨を定めた特約は、「原則として貸主の修繕義務を免除したにとどまり、積極的に借主に修繕義務を負わせる趣旨ではない(最判 昭43・1・25)とし、貸主が修繕義務を免れるからといって、借主に修繕義務が生じるものではないとされています。

 

また、修繕義務を借主負担とする特約は、小修繕については有効な定めですが、大修繕の場合は、貸主は修繕義務を免れることはできないとされています。以上が大家さんの修繕義務です。一般の居住用物件について記載してみましたが、いかがでしたでしょうか?

2016.11.02

第8回 管理会社の社会的な責任について

今日は、私達も一部管理業務を行っておりますので、管理会社と言えるかもしれませんが、一般的な管理会社の社会的な責任について書いてみます。

 

大抵、管理会社というと、大家さんの煩わしい業務を変わって行うというイメージだと思います。そのイメージで管理を任せる場合、どこの管理会社に頼んでも、質の違いこそありますが、あまり変わらないのではないか?というのが正直なところです。

 

弊社も管理業務を行ってはおりますが、所有者ができない業務を代わりに行う代行型の管理は基本的には受けていません。では、どのような目的で行っているかというと、収益的に安定した賃貸借の仕組みを維持することを目的とした管理を行っています。

 

大家さんの資産の適切な運用という観点から、貸主の持っている金融資産を含めたすべての資産の組み合わせ(ポートフォリオ)の中で、不動産資産の運用として、賃貸経営並びに管理を提案して、結果としていかにその不動産から収益を上げるかという視点で賃貸管理を行っています。

 

ですので、これからは、賃貸経営を代行して行う専門家としての管理会社であるという社会的な責任をもって業務にあたって参りたいと考えております。

2016.10.20

第7回 短期での収益性と長期での収益性

皆さん、こんにちは。今日は、短期と長期の収益性について書いてみます。

 

ある地方都市は、建築制限により大きな建物が立ちにくく、低層のアパートが多く作られています。そうすると、入居者一人当たりの運営費(Opex)が多くかかり、実質利回りの低下が起こっています。その都市の某新築区分マンションは実質利回り4パーセント前半です。

 

管理費と修繕積立金、銀行からの借り入れを差し引けば、税引後の手残りはほぼないところか、マイナスとなってしまいます。ですから、物件を売却する側からしたら、銀行の融資をできるだけ長く引っ張って月々の返済を少なくしようと躍起になります。

 

単年度でキャッシュフローが見込めないものが、長期で見込めるようになるとは思えません。何故なら、日本の不動産はそもそも売却時の価値が上がる性質のものではないからです。では、どのようにしてその投資を見たらよいのか?それは、入口からキャッシュフロー、出口までを見据えた複数年度での利回りである内部収益率(IRR)で判断すればよいのです。

 

10年後、ご自身で購入された不動産がいくらで売れるのか?ここの見極めが極めて大事だと思います。デベロッパーは、近い将来で売却すれば確実に含み損がでることがわかっていて、あえてそのことには蓋をします。築2年、3年で新築の分譲マンションが競売に出されていいることを見れば一目瞭然だと思います。

 

皆さんは、是非正しい投資知識を身につけていただき、業者の利益を数十年もかかって返済し続けるといったことはやめて欲しいなぁと切に願っています。

2016.09.10

第6回 賃貸借契約で印鑑証明書はなぜいるのか?

今回は、賃貸借契約で印鑑証明書がいるのは何故か?ということについて書きます。印鑑証明書は、その登録した印鑑が役所に登録してある事を証明するための書類です。賃貸借契約では必要書類として用意しないといけないものになることが多いです。連帯保証人さんが提出するような書類となっていますね。

 

印鑑証明書は役所で印鑑登録をする必要があります。その辺で買ってきた三文判でも登録が可能です。そのハンコと手数料を役所にもっていきます。あと、提出するご自身の身分証明書は、事前に行かれる役所に確認していただいた方が無難です。あとは、書類を書いて真正すれば書類をもらえるという流れです。

 

では、印鑑証明書が必要なのは、なぜでしょうか。それは、本人が印鑑を押したということを証明するためなのです。ハンコは押されていても、自分は知りませんということを言えなくしているのです。本人が承知しなければ印鑑証明書は取り寄せできませんから。賃貸借契約の際は連帯保証人は契約の場に同席していないことが多いです。大家さんとしては、本当に連帯保証人になるつもりがあるのかどうかを確認する材料となるのです。

 

以上が印鑑証明についての内容です。少しは参考になりましたでしょうか。それでは、また次回。

2016.08.25

第5回 オーナーが変わった場合、敷金はどうなるのか?

今日は、入居中に家主さんが変更された場合の敷金の取り扱いについて書いてみます。パターンとしては、以下の3つでしょうか。

 

1.通常の売買で家主さんが変わった場合

大家さんが誰かに部屋を貸していて、その物件を他の人に売ったとします。借主さんからすると、単に大家さんが変わっただけだと思います。でも、入居した際に預けた敷金は、前の大家さんに預けたままです。さて、どうしたものでしょう?この場合、新大家さんに敷金の返還請求が可能です。通常の売買では、賃貸人としての地位をそのまま新しい大家さんに承継しているからです。

 

2.競売などの民事執行法上の手続きで家主さんが変更された場合

この場合は、抵当権(物件や土地を担保にしてお金を借りた際に設定する権利)の登記が賃貸借契約よりも前か後かで変わってきます。抵当権の設定登記が賃貸借契約よりも前の場合、残念ながら、前の大家さんに請求するしかありません。この場合は、お金を返せなくて競売になってしまった大家さんなので、返してもらえないことがほとんどだと思います。

 

抵当権の設定登記が賃貸借契約よりも後の場合は、新しい大家さんに敷金の返還請求が可能です。競売では、消除主義と言って、一般的に競売手続きでほとんどの権利は一旦リセットされます。しかしながら、一部残る権利もあります。この場合はそれにあたります。

 

3.相続によって大家さんが変わった場合

この場合について考えてみましょう。通常親族の方がその物件を相続されると思います。その場合、よほどのことが無ければ相続人が賃貸人としての地位を引き継ぐこととなります。つまり、借主さんは敷金についても新しい賃貸人(相続人)に変換の請求ができるということになります。

 

このように、引き継がれることが原則になりますので、新しい所有者さんは、敷金は基本的に返さないといけないお金だということをあらかじめわかっていることが大事ですね。中には、後から返さなくてはいけないのに使ってしまって工面が大変という方もいらっしゃいます。注意しなければいけませんね。